かつてホンダの単気筒バイクにはGB400TTというモデルが存在していました。
自分が知る限りでは、ホンダ社製の市販車でこれほど影の薄いバイクはなかったのではと思います。
目次 非表示
単気筒モデルGB400TTの存在
GB400TTというバイクはCB400SSと同じホンダの空冷単気筒バイク、世代的には1980年代のバイクでCB400SSの前身となるCL400よりもずっと前に発売されていたモデル。
1980年代といえばバイクブームでレーサーレプリカが流行った時代ですが、当時ですら見かることの少ないレアなバイクだったというのがGB400TTでしょう。
レトロチックなバイクに乗りたいけどSRはヤマハのバイク、できればホンダに乗りたいという人が選ぶバイクでした。
当時、バイク乗りの視線が一気に4気筒へ向いていたところにSR400の車体は華奢に見える部分もありましたが、GB400TT(GB500も外観は同じ)の車体は単気筒車の軽快さを打ち消したかったかのようなデザイン。
そんなGB400TTのデザインのルーツはBSAのゴールドスターにあると聞きます。言われてい見るとGB250クラブマンもそんな感じがします。
車名に付くTTはマン島TTレースから取ったものでTourist Trophy(ツーリストトロフィー)の意味。
80年代当時、SR400がクラシカルなイメージが強く、バイク乗りというよりレプリカ路線に興味のないお洒落な人に受けていたような気がします。
その反面、雑誌などで見る(当時でも実車をほとんど目にしなかった)GB400(500)はズングリしていて何かあか抜けない感じで、今になって英車のBSAが由来だよと聞けば納得できますが、猫も杓子も4気筒に夢中なところにBSAのゴールドスターやビクスターは何の価値もなかったことでしょう。
今年、BSAゴールドスター復活のニュースがありましたが、ネットで画像を見てみると水冷化のため大きなラジエターが搭載されていました。
これを思うとGB350が空冷で発売されたのは、まさに歓喜すべき出来事と言えるでしょう。
ホンダのバイクでGBと言えばGB250クラブマンを思い浮かべる人が多いですが、それに遅れて世に出た400ccモデルがGB400TTであり、現行モデルのGB350はこれら空冷単気筒の「GB」を引き継いでいるということになります。
このホンダの400cc空冷単気筒の歴史から見てCB400SSもGB400SSにならなかったのかと思わなくもないですが、思いのほか不発だったと言えるGB400TTの不人気ぶりを知れば、フラッグシップの「CB」を単気筒車へもつけたかったメーカーの気持ちが分からないでもありません。
GB400TTの純正キックアーム
画像の右側、メッキが施されているほうのキックアームはGB400用のものです。
GB400TTのキックアームは形がCB400SSのものと似ていますが、実際に取り付けてみると根元の部分に形状の違いがあってステップ周りに干渉するのでCB400SSでエンジンをかけることはできません。
GB400TTはセルスターターが付いていてセル・キック併用可能なモデル。
兄貴分のGB400(500)についていたセルスターターはなぜCB400SS(前期型)に引き継がれなかったのかは、そもそも継承元のCL400にセルが付いていなかったのと、ライバルであるヤマハのSRがセルなしで売れていたので付ける必要がなかったのでしょう。
そして現行モデルのGB350にはキックスターターがないのは、セルスターターがあるのに余計なものを付けて重量や生産コストを増やさないというのが理由かと思われます。
この手元にあるGB400のキックアームは、何年か前にカスタム用になりそうだと考えて中古で入手していたものですが、CBには使えないので今となってはただのガラクタです。
前期型CB400SSのキックアームは、発売当時このバイクのクラシカルなスタイルに似合わないという評判がネットに書かれていました。
一部の方が書き込んでいた意見ではありますが、メーカー側としてはGB400(500)の影を引きずりたくなくて、CBの名のもとにキックアームだけはXRと似たような恰好にしたのかもしれません。
なお、CB400SSの前身であるCL400のキックアームはマフラーやエキパイの取り回しに影響されてかクネクネ曲がった形のものが付いています。
そして、今気づいたのですがCLのほうもGBに同じくBSAに影響されたのかビクスターに車体のデザインが似ているような感じがします。
メーカーの開発者やデザイナーのセンスには優れたものがありますが、飛びぬけすぎていて市場には受け入れられないのが常です。
そんなことを考えると、発売当初からそこそこ人気のあるGB350には、ユーザー目線を重視してバイクメーカーとしてどこか妥協した部分があるのかもと勘ぐってしまいます。
そして、我が愛車のCB400SSもどうやら今頃になって(中古として)市場から評価を得てきているようです。
新車の供給が追い付かないだけが理由ではないとオーナーの一人として信じています。
おすすめ記事