エンジンの始動方式がキックスタートに限られるバイクに乗っていると不便ではないのか?実際のところどうなのでしょう。
セルスターターなしのキックオンリーなバイクに乗った経験のある人でなければ分からない、あんなコトこんなコトをまとめてみました。
喜んでキックを楽しむのは最初だけ
想像はつくと思いますが、キックスタートこそバイクの醍醐味だと喜んでキックアームを蹴りおろすのは最初だけです。
中には、熱烈なSRファンのように儀式と称してキックを躊躇わない方もいらっしゃることは確かです。
ただし、そんなにキックが楽しければキックオンリーのバイクはもっと世の中に増えていることでしょう。
たいていの方は、セルボタンが恋しくなり、あるはずのない右ハンドルのボタンを親指で探してみたりしてしまいます。
このホームシックのような、セルボタンが恋しい期間を乗り越えればやがてキックスタートが当たり前と受け入れられるようになります。
ここで諦めてしまうと、バイクに乗らない期間が長くなりエンジンは徐々にかかりにくくなって、やがて手放してしまうなんてことも・・。
信号待ちでエンストするとスタートできない
免許取り立てのときなど、乗りたいバイクを選んでいてキックスタートしかないバイクが購入候補に挙がったとき、「もしこれに乗っていて交差点の信号待ちでエンストしたら大変じゃないだろうか?」と心配になることがあるでしょう。
はい、あなたの不安は的中します。
キックオンリー車両というのは、何故かここぞという大事な場面でエンジンがすんなり始動してくれません。
右折車線で信号に右の矢印が出た途端にエンスト。後ろには車が連なっているが、以後数回蹴ってもエンジンかからずなんてこともあり得ます。
そして、焦れば焦るほどエンジンはかかりません。
こんな特異な場面では、バイクから降りて車両を押しながら交差点を右折しきって路肩に寄せるしかありません。
特に真夏に空冷エンジンが熱ダレを起こし、再始動できないときは早めに安全な場所に退避する必要があります。
車検場の検査レーンでエンジンかからない
車検をバイク屋に頼む場合は心配要りませんが、ユーザー車検でバイクを検査に持ち込んだ際など、そんな大事なときに限ってエンジンがご機嫌斜めなんてことがあります。
ユーザー車検なら自分でしっかり整備しておけば問題有りませんが、大手のバイク店などで、整備はサービス担当が行い実際に車検場に行くのは別な営業担当だとなると自分で整備した車両でないバイクでキック始動できないということが起こりえます。
なんともいたたまれない話です。例えば、始動が不調となる原因がプラグのギャップ調整などで済むなら自分で解決可能であったかもしれないわけです。
それがサービス担当の手抜きで、いくらキックを蹴りおろしてもエンジンが始動できないとなると文句の一つも言いたくなるでしょう。
車検の流れとして、外観検査のとき一度ハンドルロックを確認するためにメインスイッチを切らなければならないので、スムーズに次の検査に進むためには始動性は万全にしておきたいところです。
格好つけたいときは割と上手くいく
街中の駐輪場からバイクを出した後など、人前でキックしなければならない場面がたまにあります。
こんなときはスマートに始動を決めたいところ。
同じバイクに長く乗っていれば、始動のコツというのが少なからず身につきます。
メインスイッチを入れる前にゆっくり空キックをする。シリンダー内のピストンが始動しやすい場所にあるか探るなど。
長年の勘みたいなものですが、落ち着いて集中できる場面では身につけた言わば「キックの技術」のようなものは裏切りません。
キックをしくじりたくないと思うシーン(カッコつけたいとき)では高確率で一発始動してくれます。
もし繰り返しキックに鍛錬を費やしても上達できないのであれば、燃料系や点火系の整備が行き届いていないか、はたまた、そういうバイクがあるかどうか分かりませんが、「そもそも外れ車両だった」かでしょう。
バイク買い換えるなら次はセル付きだ
プライベートの日でも仕事の朝でも予定通りの時間に家を出たいときに、キックでなければエンジンがかからないのが常です。
こうなると、ボタンを押すだけのセルスターターは実に便利に思えます。
そして、次にバイクを買い換えるならセルモーターとキックアームが両方ついているバイクが良いなと考えるようになるのは実に自然な流れでしょう。
幸い同じCB400SSを選べば、後期モデルには両方ついているので迷う必要はありません。
問題は、それ以外の車種ではセルとキック両方はなかなかありません。
もし普通のセルスターターのみの車両を選ぶなら、そのバイクは軽い車体ではない可能性が高いでしょう。
中型以上の排気量のバイクをキック始動に仕上げる理由は「車体を軽くすること」以外他にありません。
なんだかんだで蹴れない日常は寂しい
以上、長年キックアームを蹴りおろしてきた経験から書き出した「キックスタートあるある」でした。
ほかに一所有者として意外に感じたのは、納車当初に予想していた「エンジンがかからなくて出かけるのを諦める日」というのが一度もありませんでした。
それだけ、長期の放置が少なかったということと、キックがダメなら押してみる。押してだめなら坂道を探すなど、走りたい気持ちを諦めなかったことも関係しているでしょう。
きっと、この先も何年かは同じ状態を維持できるのではと考えています。
一見面倒なキック式のバイクですが、長いこと、この手のバイクに乗っていると逆にキックのないバイクライフというのが想像できません。
セル一発でエンジンが始動できれば、それはそれで便利ですが、ある意味当たり前すぎて寂しくも感じます。
キックアームの存在は、私たち単気筒乗りにとって一つの個性であり、数多くいるライダーの中でも一つのスタイルを象徴するものと言っても過言ではないでしょう。
購入を迷っている人に一つアドバイスするなら、キックスタートしかないバイクは正直不便です。その不便さを個性として自分の日常に受け入れることができるかどうかが判断のしどころではないでしょうか。
それを受け入れることができれば、キックのある毎日は充実したものになるでしょう。
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