鉄は熱いうちに打てと言われますが、私の経験と一部の限られた情報からは暑いうちに済ませておきたいバイクのメンテナンスというのがあります。
それは シートの貼り替え。暦の上では立秋を過ぎても8月はまだ暑さが残ります。実はこの「暑さ」こそがシートの貼り替えには役立つのではと考えます。さらに、この時期だと下地の樹脂も温めて柔らかくする手順が省けそうです。
樹脂が固いのは、気温のせいではなく旧車故の劣化が原因だとすると意味がない行動のようですが、暑くてやる気が出ない時期はこの手の緩い整備が向いているのは間違いなさそうです。
貼り替え前の劣化が進んだシート
今回貼り替え作業を行うのはホンダのエイプ50、元のシートは表皮には破れがあって部分的に補修済みでしたが、そのパッチで応急処置した箇所も熱や紫外線で硬化しており、見た目的にも良くない状態でした。
この古いバイクにあるシートの破れは、外見の問題ばかりでなく劣化部分から雨水などを吸い込んでしまった場合に、雨が止んでも、しばらくは乗るたびに吸い込んだ水分が中から絞り出されてくるのが1番の難点です。
それに加え部分補修の跡には、粘度がある細かな素材がボロボロと表面に付着していて乗ったときの衣服の汚れも気になります。
以前にも書いたことがあると思いますが、シートの貼り替えは機械いじりからは少し外れた内容なので、なかなかその気になれない部分ですが、このまま放置し続けるには限界と感じたため直すことにしました。
用意した材料と工具(エイプ50/汎用合皮+低反発)
シートの貼り替え用に用意した材料と工具は次のものです。
材料
- 汎用の合皮:シート専用ではなく汎用品を使います。厚みは0.8〜1.0mm程度で以前にCB400SSで使った残りがあったのでそれを使います。
- 低反発シート(約10mm):大きさは300×200mm程度のもので、長距離対応には厚みが足りませんが、街乗りでの乗り心地改善を狙っての採用です。
- 接着剤:これも、ホームセンターなどで購入できる汎用の接着剤を使いましたが、1本では量が足りませんでした。
- タッカー用ステープル:足の長さが6㎜のものを用意しました。
これらのほかに、接着剤での固定を補うためガムテープを用意しています。
シートの表面に使う素材は、エイプ50の場合800×600mm程度の大きさがあったほうが良いかと思います。
低反発シートは厚さが10mmのものを用意しましたが、本格的なツーリング用の対策としてはシートの表面にかぶせるタイプのものが効果的かと思います。
工具
- タッカー(百均購入)
- マイナスドライバー、ペンチ(古いステープルの除去用)
- 細い金切り鋸、ハサミ、マーカー(型取り・余りのカット)
このほかに、百均で売っているプラスチック製のおろし金を準備。これは元のスポンジを平らに仕上げるために使います。
作業の手順
ここでは「汎用合皮」+「下地に10mm低反発シート」という構成で、エイプ50の既存シートの下地を生かし表面を張り替えます。流れは車体からの取り外し → 下地から古いカバーを剥がす → 元のスポンジを削り低反発の貼付 → 新しい合皮の取り付け → 車体に装着です。
車体からシート本体の取り外しは左右にある固定ボルト2本を緩めて外すことで可能。
ここまで進んだら、シートを屋内に持ち込んでいったん涼しい場所で作業をします。
外したシートを裏返しにすると古いステープル(針)がさびているのが分かります。
古い針は、数えてみると全部で43本。うち何本かは補修で打ち足したものかもしれませんが・・。
古いカバーを剥がす
裏面の古いステープルはマイナスドライバーでこじってからペンチで抜きましたが、これが思ったより手間でした。
低反発シートの貼り付け
今回は下地のスポンジの中央部分を浅く切りとって整形し低反発シートを埋め込みます。
先に低反発シートを表面に合わせてみますが、厚みは足りないものの広さは丁度良さそうです。
大きさに合わせて下地にマーカーでラインを引いてから細い鋸を使って切り込みを入れます。
タンク側を深く削りすぎてしまいましたがシートを当ててみると分からない程度なのでおそらく大丈夫。
ずれ防止と、表面の段差を目立たなくするためガムテープで補強します。なお、段差を目立たなくさせる効果は限定的なのはCB400SSでの作業で分かっています。
新しい合皮カバーの取り付け
このあと、張り込んでいくシートを被せてサイズに余裕があるかチェックしてみます。
もともとのカバーとスポンジの間にあった透明のビニルシートみたいな薄い(防水用?)カバーは、替えの材料を用意していなかったので再利用することにして、これもガムテープで固定。
この透明のラップみたいなのも新しくしたほうが良いのかと思いますが、普通のポリ袋なんかだと滑ったりしないか少し気になりました。

先にタンク側とテール側を1か所ずつ固定
新しいシートの固定は、先に前後(タンク側とテール側)に引っ張ってからタッカーを使って固定することにしました。
この辺は、正しい手順があるのかもしれません。
次に左右のサイドを同じく引きながら抑えてタッカーの針を打ち込みます。
ここからの、強く引っ張ってから固定というのが気温が高い時期だと少ない力で済むのではと・・、下地の樹脂にも針が刺さりやすく感じます。
どこか始点を決めてから順に打ち込むのではなく、全体のバランスを考えながら均等に張りつつ針で固定といった要領で打ち込んでいきます。
普段はやらない作業なので、どうしても針が浅く入ってしまった場所はハンマーを使って叩いています。

一通りタッカーを打ち終わって余りをカットした状態
ある程度、作業が進むと余りの合皮が邪魔になるので、短くなり過ぎないよう少しずつカットしながら進めていきます。
一通り針の打ち込みが終わったところで表面の温度を計ってみると60℃台でした。細かな仕上がりの確認は屋内に入ってからにします。
汎用品の材料を使ってのDIY作業だと、どうしても見た目が劣ってしまういますが、これでズボンの汚れや雨水の浸み込みは回避できます。
貼り替えが済んだエイプのシート
その後、屋内で充分な休憩と水分補給を行ってからシートを車体に取り付けて試走してみます。
仕上がったエイプ50のシートは、座面の座り心地は補修前とほぼ変わらない感じで、ここで使用したのはバイク専用ではないので乗る人によっては表面の滑り具合が気になったりとかはあるかもしれません。
内部に入れた低反発シートは厚さが10mmなので期待は薄いですが、通勤〜プチツーリングなら対策前と違いが感じられるのではと思います。
また、真夏のうちに作業ができたので、この先表面の伸びやゆるみが生じにくいといった面は期待できるかと思います。
少し気になるのは一枚モノの合皮素材なので後ろ側の垂直に下ろしている部分のシワがどうしても処理しきれず2か所ほど大きく折り込んでるのが目立ちます。
メーカーロゴが無くなるのに加え、こうした処理しきれない折り目が気になる場合は純正部品を使うか、プロに頼むのが良いでしょう。
おすすめのページ