月間あたりの走行距離が短めで乗る機会の少ない車などに対して、車体を長持ちさせたかったら頻繁に乗ったほうが良いという話を聞いたことはないでしょうか。
車好きの方が良く口にするアドバイス的な話ですがバイクにも当てはめられることがあります。果たしてその根拠はどこにあるのでしょう。
世の中の多くのモノは使っただけ消耗し、無駄な負荷や損耗を避け状態良く保存できれば長持ちします。
そして、バイク屋さんのかかえる在庫車両は売れなければ中古であれ新車であれ外を走らせることはないように見えます。
バイクだって使えば消耗する
「適度に乗ってあげたほうがバイクは長持ちする」そう言われると、あまり乗らないバイクは長持ちしないとも受け取れます。
それでも、冬の間は寒いからバイクに乗らないというライダーは少なくないことでしょう。
何を持って長持ちしないのかと考えると疑問です。
バイクは適度に乗ってあげないと長持ちしないという話は、間違っているというより少しばかり表現がずれていそうです。
正直なところ、バイクだって工業用や農業用の機械と性質はそれほど変わらないことでしょう。
エンジンの運転時間が長ければ長いほど内部のピストンリングは間違いなく磨耗します。
エンジンだけでなく他の駆動系のパーツも動いただけ回転しただけ僅かに磨耗しつつづけ、乗ったらその分寿命は早まることでしょう。
ただし、放置期間が数ヶ月など長くなるとシリンダーの油膜切れの心配があるので適度にクランキングさせておく必要はあると考えられます。
不動期間により現れる車体の不調
バイクは乗ってやった方が長持ちするという話をされると、乗らないと壊れてしまうのかと不安になります。
バイクを乗らずに不動にしてしまった場合に現れる症状として代表的なものにバッテリーの劣化があります。
バッテリーが完全に放電してしまったら充電による回復が見込めないため交換が必要になります。
それから、消耗品と言えど丸いタイヤの一定の部分だけを長いこと地面(保管場所の土間など)に接触させておくのも特定の部分に負担がかかりそうです。
心配されるエンジン内部の油膜切れに関しては、不動にした期間によりますがプラグを抜いてクランキングさせるなど対処方法も必要になってきます。
これらのように、突出して多い症状の他は車両の放置がどの部分に影響するかは車体の年式や整備の状況によりまちまちなため、放置によってここがダメになるとは言われることはありません。
私が、同じ車両に10年以上乗り続けてきて1ヶ月以上の放置期間を何度か経験した経過から1例をあげるとすると、制動装置(ブレーキ)は放置による不調が出やすい部分かなと感じます。
ブレーキに現れる症状としては、ブレーキ鳴きの他にパッドの戻りが鈍くなるような感触があります。
これらは走行時やブレーキ操作時に生じる鉄粉やダストを周りのパーツに付着させたまま放置することにより、それらの錆や汚れが内部に固着しとどまり続けブレーキの動きを鈍くする原因になるようです。
他には、これといってどの部分が不調ということを感じませんが、冬の乗らない間はチェーンへの注油は怠りががちになります。
また、走行距離が伸びなければタイヤがすり減ることがないため、車体からホイールを脱着する機会がなくシャフトやベアリングへのグリスアップもしなくなります。
もっとも、これらは乗らない間もバイク店で定期点検をしてもらうことで充分防げると思われますが、普段乗る気にならなければ点検にも出される機会も少ないことでしょう。
「乗らないと長持ちしない」の本当の意味
このように、マメに動かしてあげないとバイクが壊れてしまうかのような話は一見根拠がないようにも思えます。
なぜ車やバイクなどの乗り物は頻繁に動かして乗ってあげたほうが長持ちするといわれるのか?その理由は、バイク屋(車屋)さん目線にたてば何かヒントが掴めるかもしれません。
たとえば、半年ほど放置してしまったバイクがブレーキの固着によりバイク店に持ち込まれれば、バイク店側としては中途半端な整備で返す訳には行かず安全に乗れるようブレーキ一式を整備することになるでしょう。
また旧車に限っての例になりますすが、燃料供給装置にキャブレターを使用している場合、不動の期間が長くなれば内部で腐食が進みキャブレターの分解清掃が必要になります。
ブレーキもキャブレターも、車両を放置することによって手間のかかる整備が必要になりそのままでは普通に走行できません。
この手間のかかる整備が発生することをバイク屋さんは長持ちしないと表現しているとすると、そこそこ納得できる話と解釈できそうです。
こうした類の整備は、手間がかかるだけでなく費用面からみるとユーザーには結構な負担になることでしょう。
もちろん頻繁に乗り続けているバイクも、その分整備に費用がかかりますが乗らないバイクは走りを楽しんでいない割に維持費が高くつくという結果になります。
適度に乗ったほうが長持ちするというのは、この辺のかかる手間や費用をわかりやすく要約したものと捉えて良いのではないでしょうか。
楽しく乗っていればコンディションは維持できる
バイク店のオーナーなどバイクに詳しい人たちは部品さえ手に入ればそのバイクを延々と維持していけるので「長持ちする」の概念が一般ユーザーと少し違うと考えて良いでしょう。
そう考えると、バイクに詳しい人たちやプロの意見をすべて鵜呑みにする必要もないのは分かります。
バイクは小回りの利く便利な乗り物ですし、生活圏での移動やレジャー目的で楽しむ程度に乗っていればそこそこのコンディションは維持できるでしょう。
また、バイクを放置することによってとどの部分に支障をきたすかは、そのバイクごとによって異なります。今回例にあげたのはブレーキでしたが、自分のバイクを動かさなかったときに弱い部分というのは経験によってしか知る術がありません。
結果論ではありますが、そうした不調の現れ方を読みとれるようになればさらに自分のバイクへの愛着は沸いてくるとも言えます。
乗らないと調子が悪くなると聞いたからという理由で走らせるバイクに楽しさはないことでしょう。
いつ乗ったら楽しいか、どこを走ったら楽しいか、これがバイクの楽しみ方の基本であることも忘れないようにしたいものです。
おすすめ記事
オートデコンプならピストン位置を気にせず始動できるという都市伝説 単気筒に乗ってるけど4気筒のことを深く掘り下げた話をしよう