オートデコンプならピストン位置を気にせず始動できるという都市伝説

CB400SSのキックアーム

今のバイクに乗り始めときのこと、CB400SSはオートデコンプが付いているからSRと違いシリンダー内のピストンの位置を気にせずにどこからでもキックアームを蹴り下ろせるという話を聞いたことがありました。

実は始動しやすいわけでもないオートデコンプ

CB400SSに乗ったことがある人なら分かると思いますが、このバイクはピストン位置を気にせずにキックスタートをしていると毎回蹴り心地が違うので始動のコツが一向につかめません。

何も気にせずにキック始動を繰り返いしていると、何回かに一度は踏み込んだ足に全く抵抗を感じずアームが下まで降りてしまう空振りみたいなのが発生します。

こんなときは始動に失敗することになるほか、負荷を感じない肩透かしをくらうので体制を崩して立ちごけしそうになってしまいます。

それから、CB400SSについてだけで言うならキックの動作は力よりスピードが重要です。

長いことオートデコンプ&キックオンリーと向き合ってきて、無造作に蹴れるからそれが始動性の良さになっているかというとそんなことは無さそうです。

キックのタイミングとクランキングの関係

ピストン

オートデコンプがあるCB400SSでは、SRと違いピストン位置を確認できるインジケーター(覗き窓)がありません。

だからといって適当な場所からキックアームを踏み込むより、自分がキックしやすい場所を狙ってそこから蹴るようにしたほうがエンジンがかがり易いように感じます。

要は毎回力の入れ具合や感触が違うより、アームの角度に応じて足に伝わる負荷がいつも同じ条件のほうがキックしやすいということ。

始動のコツを少し掘り下げて考えてみると、キックアーム(ペダル)を上から下まで押し下げた効果で、クランク軸が何回転するかを知ることは始動のコツを掴むうえで重要なことです。

ピストンの位置を気にせずにアームを蹴り下ろしただけで始動に成功するためには、1回のキックでクランク軸が最低でも2回転する必要があります。(4サイクルエンジンの場合)

キックアームとピストン位置の関係を確認する方法はプラグを抜いて、プラグホールに指をあてながらアームを動かし圧縮のタイミングを確認するなど何通りかあるようです。

より少ないクランキングで始動に必要な着火を成功させるには、排気の上死点に達した付近からアームを蹴り始め混合気をシリンダーに吸い込ませ、ストッパーに当たるまでに今度は圧縮上死点まで完全に持っていくことが求められます。(究極の理想論)

この条件で求められるクランクの回転は少なくとも1回転です。

実際にアームを上から下まで蹴り下ろしてのクランキングが2回転未満なら、蹴り始めのタイミングを計るのにピストン位置を確認する必要があるでしょう。

ただし、日常のキック動作においてインジケーターがないバイクでそれを実現するのは簡単ではありません。

キックしやすい場所から蹴り下ろすのが正解

CB400SSでキックスタート

特にエンジンが始動できる、できないに関わらず、キックスタートのときにはアームを蹴り下ろすタイミングやスピード、足に伝わる負荷など限られた条件が毎回同じであることがコツを掴む上では重要です。

このとき、必ずしも上死点にピタリと合わせなくても乗り手が効率よく始動できたと判断できる位置であれば、それほど問題はないでしょう。

ただし、デコンプレバーもないバイクで蹴る直前にカシャカシャと小刻みにピストン位置を探る操作は事情を知らない他のライダーから見れば滑稽に映りそうです。

ところで、先に書いたオートデコンプならピストン位置がどこからでもキックできるという話。

これを信じるなら、キックアームを足で全く押さずに目いっぱい上にある状態から蹴り始めてストッパーに当たるまでの可動域の全行程をフルに使ってキックしなければ成功率は下がります。

なおかつ毎回一発で始動できるとは限りません。

そんなことなら、他人には意味なく見えてしまう小刻みに踏むカシャカシャな呪いをその都度付け加えたほうが効率は良さそうです。

ちなみにどこからでもキックできるという都市伝説は今じゃネットで探しても簡単には見つかりません。

当時はあまり役にたたない情報だと思っていましたが、今となってはセルなしのエンジンと付き合う上で良いきっかけになった話だったと思っています。

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